【太陽光発電】メンテナンス・保守の義務化で何が変わる？点検内容を解説

なぜメンテナンスが義務化されたのか？

太陽光発電設備のメンテナンス義務化の背景には、主に以下の3つの理由があります。

法律による義務化

出力規模に応じて、電気事業法や改正FIT法（再生可能エネルギーの固定価格買取制度）によってメンテナンスが義務付けられています。これらの法律に違反した場合、FIT認定の取り消しなどの罰則が適用される可能性があります。

経年劣化によるリスク軽減

太陽光発電設備は、長期間稼働させることで経年劣化し、発電効率の低下や故障のリスクが高まります。定期的なメンテナンスを実施することで、これらのリスクを軽減し、設備の寿命を延ばすことが期待できます。主な劣化リスクは以下のとおりです。

• 太陽光パネル：30年以上稼働可能ですが、徐々に劣化し発電量が低下します。
• パワーコンディショナー：約8年で劣化し、故障のリスクが高まります。
• その他：災害や落雷による破損、水没などもリスクとして挙げられます。

第三者への被害防止

メンテナンス不足によって設備が故障した場合、感電や火災などの事故が発生し、第三者への被害につながる可能性があります。定期的なメンテナンスは、安全性を確保し、周囲への影響を最小限に抑えるうえで大切です。具体的には以下の事故リスクが考えられます。

• 感電：水没した太陽光パネルに触れることで感電事故が発生する可能性があります。
• 火災：劣化や清掃不足が原因で、太陽光パネルやパワーコンディショナーから出火するリスクがあります。

これらのリスクを回避するためにも、法律で義務付けられているかどうかに関わらず、すべての太陽光発電設備で定期的なメンテナンスを行うことが推奨されます。

誰が対象？自家消費型も対象？

太陽光発電のメンテナンス義務化は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度（FIT）を利用している設備が対象です。FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間、固定価格で電力会社が買い取ることを国が保証する制度です。FIT制度を利用している方は、出力規模に関わらず、メンテナンスを義務付けられています。

自家消費型太陽光発電は、発電した電気を自家消費することを目的とした設備で、余剰電力を電力会社に売電することも可能です。自家消費型太陽光発電もFIT制度を利用している場合は、メンテナンスの義務化対象となります。

つまり、10kW以上の太陽光発電設備でFIT制度を利用している場合、売電の有無や自家消費の有無に関わらず、メンテナンス義務の対象となるでしょう。FIT制度を利用していない太陽光発電設備は、出力50kW以上のものが電気事業法に基づきメンテナンスを義務付けられています。

現状分析

まずは発電所の規模、設置環境、機器の仕様などを詳細に把握します。過去の故障履歴や発電データも貴重な情報源となります。

目標設定

計画の目標を明確にします。「発電効率の維持」「故障発生率の低減」「設備の長寿命化」など、具体的な目標を設定することで、計画の有効性を評価しやすくなります。

実施体制の構築

誰が、いつ、どのような作業を行うのかを明確に定義します。外部業者に委託する場合、契約内容や責任範囲を明確にしておくことが重要です。

スケジュール策定

点検項目、実施頻度、作業時間などを考慮し、年間スケジュールを作成します。定期点検に加え、季節ごとの特別点検なども盛り込みます。

予算確保

メンテナンス費用は、部品交換、人件費、委託費用など多岐にわたります。予期せぬトラブルに備え、余裕を持った予算を確保しておくことが重要です。

記録・管理：点検結果や修理履歴は詳細に記録し、データベース化します。これらのデータは、今後のメンテナンス計画の見直しや改善に役立ちます。

目視点検

太陽光パネルの表面にひび割れ、欠けがないか、汚れや異物の付着がないかを確認します。また、パネルの変形や変色、隙間などもチェックします。

ホットスポット点検

太陽光パネルの一部が発熱するホットスポット現象は、発電量の低下や火災の原因となります。赤外線カメラなどを用いて、ホットスポットの有無を確認します。

配線・接続部の点検

配線ケーブルの断線、劣化、接続部のゆるみがないかを確認します。接続箱やコネクタなども含め、適切に接続されているかを確認します。

架台の点検

太陽光パネルを支える架台の腐食、破損、ボルトのゆるみがないかを確認します。強風や地震などで架台が損傷していないかも重要な点検項目です。

パワーコンディショナー点検

パワーコンディショナーの動作確認、表示ランプの点灯状態、異音や異臭がないかを確認します。また、内部の清掃や冷却ファンの動作確認も行います。

これらの点検項目を定期的に確認することで、早期に異常を発見し、適切な対処をすることが可能です。